集落による集落のためのシンクタンク

みんなの集落研究所平成30年度成果報告会を開催させていただきました!!

5月 31, 2019

個人・家族の課題解決地域を支える人材の支援・育成集落・組織の課題解決 おしらせ

5月25日(土)13:00~16:40 岡山県総合福祉会館きらめきプラザ3階にて、みんなの集落研究所平成30年度成果報告会を開催いたしました。

県内南北各地、そして遠くは、佐賀県からも50名を超える方々に足をお運びいただきました!

今回の内容は、以下のとおりです。

第一部:『みんなのモビリティプロジェクト成果報告会』
(認定NPO法人英田上山棚田団との共催)
1.成果①住民による移動の仕組み実現
2.成果②半自走式草刈り機の開発
3.成果③モビリティ観光事業

14:45~ 第二部:『特定非営利活動法人みんなの集落研究所成果報告会』
1.生活支援コーディネータに求められる地域での役割
2.地域組織と空き家の活用

 

まず、冒頭に代表執行役の石原より、開会のご挨拶をさせていただき、みんなのモビリティプロジェクトと、美作市上山地区の概要説明から、第一部がスタートいたしました。

 

第一部:『みんなのモビリティプロジェクト成果報告会』

 

 

 

1.成果①住民による移動の仕組み実現

英田上山棚田団のメンバーであり、みんなの集落研究所執行役の水柿よりご報告をさせていただきました。

上山地区において、車の所有や生活状況など、日常生活にかかる暮らしの状況を世帯別ではなく、個人へのヒアリングとして、訪問調査を実施し、「車を所有していない」や「自主返納をした」「家族の中で一部しか免許を持っていない」などの状況を持つ移動困難世帯へ調査をし、移動手段の把握をしました。
そこから、「自分の目的を果たすことができる移動手段があるかどうかが暮らしやすさのポイントである」と整理しました。

そして、
○自治体をまたいでの移動ができる仕組み
○移動への満足度の低い10代80代への移動サポートが必要
○住民同士交流をしながら支え合える拠点づくり
これらを住民主体の取り組みでおこなうこと。そのための主体形成のために「サロン」「草刈り講習会」「ワンコイン居酒屋」「新聞発行」「乗ってみようバスツアー」「コミュニティナース導入」などなど、多くの仕掛けを実践しました。

それらの取り組みの積み重ねを経て、住民組織「助け英田しちゃろう会」を設立。そこに至るまでは、みんモビプロジェクトとして始まる以前の10年近くの積み上げがあってこそ。そして地域内におけるキーパーソンの存在がとても大きく、困りごとの声を拾い、集約し、支援者とのマッチングや、支える側の人材として地域のみんなに声をかけ、巻き込み「助け英田しちゃろう会」の運営も担っています。

 

地域内の助け合いの仕組みについて

また、地域内の助け合いの仕組みについて、コミュニティナースの十時より、取り組みの報告をおこないました。
介護状態になったとしても在宅で、地域で、できるだけ長く地域に住み続けられるためのサポートをおこなってきました。
地域と関わりを持ちたい。外に出たいけれど難しい状況にある住民のサポートやつなぎ役として、実際に上山地区内での住民の方との事例をもとに報告をさせていただきましたが、地域内におけるコミュニティナースとしての役割、専門職だからこその関わり方や地域の方の持つつながりや力があってこそ、サポートに回ることのできる重要性をお伝えさせていただきました。

 

助け英田・しちゃろう会による住民互助活動の継続

十時の報告を受けて、水柿より住民相互の助け合いの会について詳しくお伝えしました。
「助け英田しちゃろう会」では、生活の困りごとの一つに「移動」がありますが、他にも暮らしの中で困っていることがあり、それを地域の中の得意を持ち寄って助けるための会をつくろうということで設立をしました。
100助という地域通貨を使いながら、段々とみんなで運用する意識が生まれ、現金でのやりとりができるようになったり、少しずつ形を変えながら進めてきました。

これまでの困りごとの依頼数は305回(2017年5月1日~2019年5月24日)
最初は草刈りなどが多かったけれど、現在は移動(無償運送)が一番の利用件数です。その他には若い世代(移住者)の子守りなども。若い世代の困りごとを高齢世代が得意を生かして担う場面も増えてきました。

 

今後の上山での取り組みとしては、みんモビプロジェクト終了後も、支援機関と連携して自分たちでもお金を作っていくやり方をしていくこと。
また、これまでのまとめとして「支え合い活動をサービス化しない」「定期的な報告と経費概算を的確に実施する」「楽しみづくりや地域コミュニティの強化として行う」として整理しました。

 

これまでの上山の体制は、行政・外部人材企業団体が担っていた部分が多かったが、みんモビプロジェクトを機会に、地域住民と一緒に、地域住民主体で。取り組むことができるようになってきたことがとても大きな成果であった、ということでした。

 

2.成果②半自走式草刈り機の開発ついて

14時からは、
英田上山棚田団の井上代表より、
2.成果②半自走式草刈り機の開発ついて報告をいたしました。
棚田での稲作、林業、狩猟などに対して、新しい農林業を助けるような仕組みを。ということで、これまで、「超小型モビリティ大試乗会」それをもとにモビリティ(コムス)活用。
「アグリハッカソン」の開催。そこから、「草刈り」についての課題解決が多くあげられたことを皮切りに、自律移動ロボット技術を用いた半自走式草刈機を開発しました。
その活用についての映像を会場のみなさんと共有し、今後のテクノロジー×農林業利用の必要性を改めて整理しました。

 

 

3.成果③モビリティ観光事業

その後は、
英田上山棚田団のメンバーであり、みんなの集落研究所執行役の梅谷より、
「3.成果③モビリティ観光事業」について報告をいたしました。

観光ツーリズムにおける情報発信、上山を観光として発信PR活動。そして、モビリティによる他県型ツアーを実施してきました。検討から、テストツアー、そして仕組みづくりまでを一連の流れとして着手してきました。みんモビプロジェクトとしてテスト的にスタートしたことを、その後は自主事業としていかに運用させていくことができるか、という視点で動いています。
棚田再生×キャンプ場運営(地域から運営を引き継ぐ)×体験型古民家宿の営業を開始しました。観光からその先の稼ぐ取り組みへのチャレンジへと移行しています。

最後に、代表の石原より、事業成果のまとめについてご報告をさせていただきました。

1.中山間地域の3つの壁への対策(過疎の壁、高齢化の壁、行政区の壁)

2.再現可能で持続可能なモデルづくり

3.外部者による住民主体の取り組み支援

 

 

みんモビプロジェクトにおけるこういった取り組み実施と成果については、みんなの集落研究所としてご支援させていただいている「地域支援」から「仕組み設計」までの全体を通しての支援のあり方の根幹に関わる重要なポイントです。
上山地区において、「住民相互による日常生活の支援」「農業の効率化」「観光の振興」を柱において、取り組んできましたが、どの場面においても、「住民参加・住民主体の実現」のための地域の状況をいかにつくり出し、丁寧にサポートしていくかということがとても重要です。そのために必要な手順・地域における状態・支援のあり方を整理させていただき、みんなのモビリティプロジェクトのまとめとして、第一部を終了いたしました。

 

第2部 『特定非営利活動法人みんなの集落研究所 平成30年度(第6期)成果報告会』

 

休憩をはさんで第二部は、
『特定非営利活動法人みんなの集落研究所成果報告会』
1.生活支援コーディネーターに求められる地域での役割
2.地域組織と空き家の活用
をテーマにお伝えをさせていただきました。

 

 

1.生活支援コーディネーターに求められる地域での役割について

前半戦は
1.生活支援コーディネーターに求められる地域での役割について、首席研究員の阿部よりご報告をさせていただきました。
まず導入として、みんなの集落研究所の組織についての説明と、「介護予防・日常生活支援総合事業」についての説明から。
今回は、その総合事業に関わる重要な担い手である「生活支援コーディネーター」に求められる地域での役割について、ということでみんなの集落研究所でのこれまでの支援をもとにした整理とまとめをご報告させていただきました。

久米南町での助け合いに関する動画(みんなの集落研究所作成)をみなさんと共有し、総合事業における住民主体の助け合いの地域づくりについてイメージを共有しました。また、地域の担い手・人材育成にかかるサポーター養成講座やフォーラム開催をどのように活用して、本当に必要な情報を整理し、そのための支援へとつなげていくか。ということを、美咲町で一緒に取り組ませていただいた事業を例にご紹介しました。

美咲町でのみなさんと一緒に動かせていただいている部分の特徴としては、「総合事業」に関する行政から地域への動きと、「小規模多機能自治(地域運営組織)」への話の共通する部分を、関係する各課で、課題を共有し、必要な資源や支援のあり方を検討する横断的な会議の場を設けて、進めているところです。

そういったこれまでのことを踏まえて、「生活支援コーディネーターに求められる力」を整理していきました。

力1.情報を整理する力
力2.見える化する力
力3.地域課題発掘力
力4.企画力
力5.自己や他に対してのマネジメント力
力6.主体を活かす・つくるための対話力
力7.つなぐ力

もちろんこの整理は、生活支援コーディネーターがすべてを担い、完璧に兼ね備えて置かなければいけないといった意味合いではなく、生活支援コーディネーターにとって必要で、地域の声を拾い上げて、必要な資源を活かし、本当に仕組みを実装させていくために必要なことを整理したものです。
そして、この「求められる力」は生活支援コーディネーターに関わらず、「すべての支援者」にとって必要な力であるということで、ご紹介をさせていただきました。

 

2.地域組織と空き家の活用について

 

第二部後半戦は、
2.地域組織と空き家の活用について、執行役の沖村よりお伝えしました。
平成30年度の事業の中で、空き家利活用推進事業として岡山県内でご支援させていただいた地区の取り組みを中心に、ご報告しました。

(井原市野上地区)

地域で空き家チームを結成し、地区内の空き家情報のマッピング(活用できそう倒壊しそうなど)から始めて、他地域の空き家活用の視察をきっかけに、自分たちの地域でもできそうなことを整理・気運を高めて、地域にとって必要な拠点としての活用の仕方を検討し始めています。

(津山市上加茂地区)

上加茂地区と、もう少し小さな単位の個別町内会とで、課題や資源を整理するところから初めて、空き家部会を結成。やはりまずは空き家情報の把握・調査から。
こういった作業は、「地域の人たちだからこそわかる」「行政・民間サイドでは把握できない情報がたくさん」「あのひとに声をかければ使えるかもしれない」といった情報も地域ならでは。といったところがポイントです。

(浅口市大谷地区)

商店街や住宅密集地的な地域の状況のあるところ。そういったところでも空き家・空き店舗は目下の課題です。大谷地区では、空き家のマッピング作業に加えて、空き店舗を活用した改修体験ワークショップを地域みんなでおこないました。これらの作業は「実際にやってみてわかる」「そこから必要なことが見えてくる」といったことがあります。

こういったそれぞれの地区での空き家に関する取り組みが動き始めていますが、重要なことは、「地域にとっての課題はなにか」その話し合いがあったうえで、「地域として何に取り組んでいくかを話し合って選んで決めていく」というところです。
あくまでもその前提があったうえで、空き家課題が他の地域の課題解決のツールとして活用できるといった流れも大切ではないかということでお伝えをしました。

地域での空き家利活用をそれらの形でご支援させて頂く一方で、市町村向け研修会という形で行政サイドへの利活用支援もさせていただきました。

地域側の体制が整っていなければスムーズな情報共有や行政職員として入っていくことも難しく、その場合のやり方や必要なこと、そして地域側だけでなく、行政側でないとできないこともたくさんあるので、そういったそれぞれの役割・連携をもって進めていく重要さをお話させて頂きました。その後みなさんとの共有、質疑応答の時間の中でたくさんのご質問をいただき、みんけんとして大切にしている視点を中心にお答えをさせていただきました。

 

最後は、代表執行役石原のまとめと、執行役を代表して藤井が閉会のご挨拶をさせていただき、終了といたしました。

 

 

みなさんの前でみんけんの事業について、ご報告させていただく機会はとても貴重なことだと思っています。今後もこういった場をみなさんとの日頃のやりとりを大切にしながら設けていきたいと思います。
この度ご参加いただきましたみなさま、ありがとうございました!!
今年度もすでに2ヶ月が経過しましたが、改めてどうぞよろしくお願いいたします!