上山集楽みんなのモビリティプロジェクト
8月 21, 2018
地域を支える人材の支援・育成集落・組織の課題解決 美作市 おこすつなぐまもる 組織概要
- 市町村境の中山間地域に位置し、交通困難な地域である岡山県美作市上山地区において、交通困難者の課題解消と継続して集落に居住するための地域包括ケアや支事づくりの方策を検討し、持続可能な地域を目指すプロジェクト
- プロジェクト実施期間:2016年1月1日~2019年9月30日(予定)
- パートナー:一般財団法人 トヨタ・モビリティ基金、NPO法人英田上山棚田団
- 協力:美作市、岡山大学(おかやま地域発展協議会でご紹介いただいた記事) 他
- 助成:一般財団法人 トヨタ・モビリティ基金
※一般財団法人 トヨタ・モビリティ基金によるプレスリリース(外部サイト)
- 本プロジェクトへつながるものとして、当法人とその前進団体が実施していた調査があります。
- 一つは、2011年に当法人の前身団体の一つである集落支援ヒビサトが中心となり結成した「岡山県中山間地域買い物助け合いプロジェクト共同体」が岡山県新しい公共の場づくりモデル事業として行った「買い物助け合いプロジェクト事業」です。本事業は岡山県内における買い物に困難を抱える地域でのヒアリング調査を行い、その実態を明らかにすると共に、その対策として県内2カ所でモデル事業を行いました。そのモデル事業の実施地域の一つが今回のプロジェクトでもフィールドとなった美作市上山地区であり、ここでは地元スーパーとの協働によるネット宅配を地域おこし協力隊がサポートして行うという取り組みを行いました。市町村の境目に位置し、商店から遠い場所であること、またそこへ移住したICTにも強い若者がいることから、地域の高齢者・移住者の若者・麓の商店が連携するモデルとして展開を行いました。
- もう一つは、2012年に当法人も参画したプロジェクトチーム「中国5県の支援と現場の組織による境界の壁を超える生活支援連携チーム」にて「中国地方の中山間地域において、買い物行動を軸に、あらゆる境界の壁を超える生活のしくみづくりプロジェクト(通称:越境のしくみづくりプロジェクト)」(助成:公益財団法人 トヨタ財団・2012年度国内助成プログラム「地域間連携助成」)を実施しました。
本プロジェクトは中山間地域の中でも特に都道府県並びに市町村境に居住する人に移動を含めた困難を抱える人が多いことに注目し、中国地方においてその実態を調査すると共に、その改善策を検討するプロジェクトでした。
- この取り組みに対して、国内の中山間地域で大きな課題である「移動の自由の確保」に関するプロジェクトの実施地域を探していた一般財団法人 トヨタ・モビリティ基金(以下「TMF」)から公益財団法人 トヨタ財団を通じて問い合わせがあり、その内容の説明をする中で、「移動の自由の確保」に関するプロジェクトの候補地を当法人で推薦することとなりました。
岡山県内におけるいくつかの地域及び実施パートナーを推薦する中で、(1)行政区の壁に阻まれる市町村境界で行われている活動である、(2)山間地など立地や地勢的に交通困難な地域である、(3)ICTやテクノロジーに対する一定の理解がある若手の組織などが存在している、(4)おかやま元気!集落への登録など、岡山県の補助事業に取り組むなど一定の活動実績があるという4点から美作市上山地区が最も条件に合致するとの判断がなされ、プロジェクトの実施が決定しました。
本地域は、鉱山で働く人たちへの食糧需要から棚田が切り開かれてきましたが、その閉山に伴い人口流出と耕作放棄がはじまり、現在の移動困難な状況が生まれています。本プロジェクトの実施にあたっては地域の課題や生活者のニーズを明らかにし、地域住民が主体となって継続的に取り組める解決策を検討するために、住民ヒアリング調査を中心に、以下の3つのチームを作り、初期の検討を行ってきました。
- 日常生活利用(買い物や通院、通学などの不便解消)
- 農林業利用(重労働であり高齢になると続けにくい農林業の負担軽減)
- 生活基盤調査(定性調査)(日常生活利用)
□実施期間:2016年1月~9月
□調査対象:上山地区にお住いの中学生以上でヒアリング可能な138人中105人
□調査目的:生活者の顕在化されたニーズと潜在的なニーズを把握する。
□調査内容:年齢や家族構成、生活圏、行動パターン、家事や移動、交流などの方法と経年変化などについて平均2時間の個別訪問でのヒアリングを実施。 - 居住者移動実態調査(定量調査)(日常生活利用)
□実施期間:2016年1月~2016年7月
□調査対象:上山地区にお住いの中学生以上92人
□調査目的:生活者の移動実態を明らかにする。
□調査内容:移動目的、頻度、同伴者の有無、場所、移動満足度、その他個人属性などについて継続的なヒアリングによるパネル調査を実施。
□調査協働:岡山大学氏原研究室 - モビリティ試乗会(農林業利用・日常生活利用)
□開催日時:2016年2月28日(日)10:30~13:00
□開催場所:大芦高原キャンプ場周辺
□開催目的:小型モビリティの農林業利用及び高齢者の徒歩と自動車の間の交通手段としての利用可能性を検証するために複数の車体による試乗実験を行った。
□試乗車両等:
・東京大学(トヨタ車両「コムス」改造車両):山コムス、トマコムス、2人乗りコムス、ママコムス
・モービルジャパン(宮城県仙台市):伊達な奴、佐吉、バギーZ、ラビット3
・日本エレクトライク(神奈川県川崎市):エレクトライクEA
・ニッカリ(岡山県岡山市):モノラック
・オアシスジャパン(岡山県岡山市):BIZMO Ⅱ - 住友ゴム工業株式会社の協賛(プロジェクト全体)
□期日:2016年3月11日
□内容:「コムス」のタイヤとして低燃費タイヤ「エナセーブ EC203」を協賛。
□プレスリリースサイト(外部サイト)
- 地域情報誌(上山新聞)の発行(プロジェクト全体)
□発行頻度:月1回(2016年4月~)
□配布エリア:上山地区内(全戸配布)
□実施目的:本プロジェクトの実施についての地域での周知と住民間のコミュニケーションツールとして実施。(みんモビ新聞から名称変更) - サロンと居酒屋の開催(日常生活利用)
□実施頻度:月1回(2016年4月~)
□参加対象:上山地区内の住民(主に高齢者)
□実施目的:地域の特に高齢者の方が抱える移動の課題や生活実態についてより詳しく把握すると共に、移動する理由である集いの場づくりを行うため。
今後の取り組みの主体となる住民組織形成の人材掘り起こしの場ともなった。
□実施概要:実費弁償の自己負担でお茶や食事、夜の食事などができる場としてサロンを月1回開催した。 - アイディアソン(プロジェクト全体)
□開催日時:2016年5月30日(月)~31日(火)
□開催場所:上山地区
□開催目的:社会事業者やエネルギー事業者、社会事業支援者を招いてブレインストーミングを実施することで本プロジェクトの今後の展開にあたっての論点整理や計画立案、今後の展開のデザインを行った。
□参加者所属組織:ソーシャル・ベンチャー・パートナーズ東京、三菱UFJリサーチ&コンサルティング、自動車新聞、公益財団法人日本財団、公益財団法人みんなでつくる財団おかやま、サステナジー株式会社、株式会社エリス、株式会社 PLUS SOCIAL、岡山県新エネルギー・温暖化対策室 - 超小型電気自動車「コムス」試乗モニター(日常生活利用)
□貸出期間:1か月間
□実施期間:2016年8月~12月
□貸出対象:上山地区に在住の高齢者(70代前後)
□実施目的:コムスの日常の足としての可能性検証とその際の移動データ取得のためにGPS付きのコムスを貸し出した。 - テストツアー「VISIT UEYAMA コムスに乗って棚田をめぐる旅~摘み草の旅~」開催(観光・仕事づくり)
□開催日時:2016年8月20日(土)~8月21日(日)
□開催場所:上山地区
□参加人数:9人
□参加費:15,000円(交通費込み)
□開催目的:コムスを活用した上山地区の住民の知恵をコンテンツとして提供するツアーについて、開催前のモニターツアーを開催し、内容の精査と小型モビリティ活用の効果検証などをおこなった。 - アグリハック in Ueyama ~農業×モビリティ×ITで上山をHackする~(農林業利用)
□開催日時:2016年10月7日(金)~8日(土)
□開催場所:上山地区、大芦高原温泉「雲海」
□開催目的:上山地区における農作業従事者の肉体的、経済的負担を軽減するとともに、作業の効率化を促し、中山間地域での移動システムの構築、持続可能な農業のあり方を関連企業や専門家とともにモビリティをはじめICTやIoT技術を活用した形で考え、棚田の抱える課題の解決に向けた方法を見出すため。
参加人数:33人(5~6人×6チーム)
□開催概要:棚田の抱える課題を(1)水路・水門の管理 (2)草刈りの作業負担 (3)イノシシ・シカの獣害の3つに分け、各課題の説明・フィールドワークを行い、1つの課題に対して2チームが解決策の提案を行った。また、部材やAPIを用いた試作品を実際に作り、デモを行った。会場の外では、小型モビリティ、農機具の展示を行い、地元の方に試乗していただいた。
※実施にあたっては事前に作業の棚卸を行い、負担の大きな作業をハッカソンのテーマとした。 - 上山プレーパークの開催(日常生活利用)
□開催頻度:2か月に1回程度(2016年7月、9月、12月)
□開催場所:上山地区いちょう庵周辺
□参加対象:上山地区を含む美作市立英田小学校学区の親子
□開催目的:上山地区の子育て中の親子の生活課題についてヒアリングを行い、通学などの移動の問題を明らかにするため。また、家と家の距離が離れているために普段一緒に遊ぶことの少ない上山地区の子どもの遊びの機会をつくるため。
□開催概要:親子が野外あそび楽しめるロープ遊具などを設置し、それらの遊びや野外料理などを通じてコミュニケーションをとる機会を設けた。
- 調査報告会の開催と助け合い組織の立ち上げ(日常生活利用)
□開催日時:2017年2月11日(土)13:30~15:30
□開催場所:上山公会堂
□参加対象:上山地区の住民
□開催概要:これまで行ってきた調査及びモニターやサロン、プレーパークなどでのヒアリング結果を共有し、今後、必要な取り組みやビジョンについて提案し、それを受けた話し合いを住民主体で行った。結果、助け合いの組織を立ち上げることとなり、3月からその組織での会合をスタートした。
これまでの取り組みを踏まえて、あらためてビジョンを再考し、以下の構想を実施するべく2017年4月より取り組みを行うこととしました。
- ビジョン:100歳を過ぎても暮らし続けられるヘルスケア・エンターテイメント集楽。
そのために、地域住民間の助け合い~専門家による支援までの包括ケアの体制を拠点を中心に構築し、そこへの移動と都市部へ接続するバス停までの移動をその体制の中で実現していきます。